女性の温泉探検記…鹿児島になぜか多い「家族風呂」が驚きだらけ
九州には由布院温泉や指宿温泉など有名な温泉地が多いですよね。そんな九州の中でも鹿児島県は温泉の源泉数がとても多く、隠れた温泉大国なのだとか。
鹿児島には温泉宿はもちろん、他県にはあまり見ない「家族風呂」タイプの温泉が多いようです。都会ではちょっと考えられない、贅沢でオリジナリティあふれる家族風呂を体験してみました。
使い切りは当たり前!? 贅沢すぎる、鹿児島の「家族風呂」事情
九州の温泉というと、ついつい“日本一の温泉県”アピールが定着している大分県を思い浮かべますが、実は鹿児島県の温泉力も相当なもの。
何といっても今この瞬間ももうもうと煙を上げ続けるあの桜島のお膝元であり、北側には火山活動レベルランクBに指定される霧島連山を臨むので、県内いたるところで温泉が湧き出でます。
“砂風呂”で知られる「指宿温泉」はあまりにも有名ですが、観光客で賑わう大きな温泉郷以外にもとにかく温泉がたくさん。温泉の源泉、温泉利用の公衆浴場(いわゆる「銭湯」)の数はともに全国2位を誇る温泉天国なんです。
そんな鹿児島を車で走っていると、当たり前ですがしょっちゅう「温泉」の二文字が看板にあらわれます。そして、温泉に続いて目立つのが「家族風呂」の四文字。
普段、家族風呂という文字を見かけることがあまりないので、あっちにもこっちにも登場する家族風呂の看板にはついつい目がいってしまいます。
家族風呂自慢の温泉がやけに多いなぁ、というのが最初の印象でしたが、その看板の多さから推測するに、どうやらこの県では家族風呂がごくごく自然に県民の生活に溶け込んでいる様子。
あまりやる気があるようには見えない(失礼)手書きの看板は、基本的には観光客向けというよりも地元の方に向けたものと理解したほうがいいのかも、というのが結論。
もともと都内出身の鹿児島在住の友人によると、鹿児島では家族風呂は県民生活のデフォルトで、確かに他県から来た人はみんな最初は驚くのだとか。
至福の源泉掛け流し家族風呂体験で家族風呂の魅力に目覚める
ということで、わたしも家族風呂体験をしてみることに。最近、鹿児島に移住したばかりの友人おすすめの家族風呂は、霧島山の北西、宮崎県との県境にあたる湧水町にある「こすもす温泉」。なぜ、こすもすなのかは謎ですが、柔らかな優しい泉質が特徴の温泉です。
外観からしてかなり特徴的なこの温泉は、田んぼが続く県道沿いにポツンと建ちます。遠目からでもよくわかるひときわ目をひく「こすもす温泉」と書かれた建物が目印です。
その造りもなかなか特徴的で、入り口を入ると正面にピンク色の建物と車がずらりと並ぶ駐車スペースがあり、車を停めた目の前が各家族風呂のドアになっています。
ピンク色の温泉というのも衝撃的ですが、なんだかどこかで見た風景と思ったらアメリカのモーテルの様子とそっくり!ということに気づきました。
利用の仕方は、空いている好きな部屋の前に車を停め、入り口の受付横にある自動販売機で家族風呂用のチケット買えばOKです。
のれんが各国の国旗デザインになっている理由はわかりませんが、2020年にやってくるオリンピックイヤーを意識してのことかもしれませんね。
各部屋の構造は、靴を脱いであがったところに脱衣所、その奥にお風呂場といういたってシンプルなもの。
清掃が行きとどいた室内はとても清潔で、浴室の広さは大人2人と子ども2人くらいがちょうどよく入れる大きさ。少し大きめの家庭のお風呂といったサイズ感です。
面白いのが、お風呂場に入ると浴槽が空なこと。
なんと、ここでは自分で栓を落とし蛇口をひねって湯をため、使い終わったらまた栓を抜いて帰るというのがルールなんです。つまり、温泉は完璧に使い切り方式の源泉掛け流し! なんだかとっても贅沢です。さすが温泉県だけあって出し惜しみしない太っ腹さですね。というか、これまで温泉の湯船を毎回使い切るという発想がなかったので、かなり驚きました。
部屋風呂温泉つきの高級旅館でもお湯は一度はったらはりっぱなしが普通なので、毎回自分だけのためのフレッシュな源泉掛け流しの湯船を堪能できるなんて、ちょっと発想の転換というか、完全に想像の域を超えていたことは言うまでもありません。
この源泉掛け流しのMY ONSENを楽しめるのはもちろん、他所の方の目を気にすることなく寝転んだり、自由な体勢でストレッチしたりできるというのも家族風呂の利点。湯船に入って身体が温まったら洗い場に寝転んでリラックスなんてちょっとお行儀悪いことをしても怒られないのは嬉しいですね。
ちなみに料金ですが、これで大人3人までと子ども人で50分600円という驚きの安さ! 大人4人以上になるとひとりあたり250円の追加料金となり、50分を過ぎると10分毎に100円の追加。明瞭会計です。
厳選掛け流しでこの低価格設定は破格以外のなにものでもありません。こちらでは当たり前なのだと思いますが、都会の感覚からすると赤字覚悟の出血大サービス!といったところ。温泉県の底力を見た気がします。
温泉というとやっぱり大きな湯船にゆったり浸かるイメージですが、たまには家族風呂を利用して自分たちだけの源泉掛け流しを楽しむのもありですね。思い切り寝転んだり、歌を歌ったり、瞑想にふけったりしても誰にも迷惑をかけないというのは魅力です。
鹿児島県にはこの「こすもす温泉」のような家族風呂が無数にあり、県民のみなさんは気が向くと利用しに出かけるようです。お肌がつるつるになるのもはもちろんのこと、温泉に入るとやはり身体の疲れのとれ方が断然違うのでなんとも羨ましい限りです。
情緒あふれる露天風呂とは対極にある実用感満載の温泉の楽しみ方ですが、これはこれでかなりありという気がしました。鹿児島へお出かけの際にはぜひお試しください!
- image by:小林繭
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